月別アーカイブ: 2013年8月

釣れない、に行く。

cho-san

ちょーさんは、おくさんに「釣りに行ってくる」というのをやめたそうだ。
ウソをつきたくないから、だそうだ。
「釣れないに行ってくる」と言うんだそうだ。悲しいほど誠実。
でも今夜は「釣れないに行ってくる」さえウソになった。
「釣らない」に来たのだった。雷め。

 

風立チヌ(後編)

そんで、赤女の帰り道ですよ。
ボーズでしょんぼり、しかも夕方には福岡に戻るのでしょんぼり、
そんな僕を見かねたのか、クウルさんが「チヌやってく?」と。やるでしょー。
でもこれが横風きつくてムズカシイ。
2か所目のポイントで、あー俺の夏も終わりかあ・・・って思いながらポッパーを引いてたら、
通りかかりのおっちゃんが話しかけてきた。
道路から釣る場所だから、よく話しかけられるんですよ、そこ。

「なんば釣りよっとね?」
「チヌを」

ここで、いつもなら「チヌ?ルアーで?へえ!」という反応になる。
へえ!の後に隠された言葉は(ルアーでチヌが釣れるんだ)もしくは(チヌなんぞ釣って楽しいのか)だ。
五島では、ルアーをやんない人にとって、チヌは釣りのターゲットではない。
「クソチン」って呼ぶ人がいるくらいだ。ところがこの日話しかけてきたこのおっちゃん。
ヒゲぼうぼう、真黒に日焼けした顔は深いシワ、乗ってる自転車は錆びてくずれそう、
首には古びた真っ赤なタオルを巻いた、この地元のおっちゃんは違った。

「いまサゲ(下げ潮)やけん、
チヌは海底の牡蠣か虫とかば意識しとって、表層は意識しとらんもんね。
アゲ(上げ潮)の効きだす5時からが良かろね」

というのだ。ちょっとちょっと。表層?意識?解説がえらく専門的じゃない?
でもこの時点では、釣りをさえぎられてちょっとメンドクサイと思ってたし
おっちゃんの姿も、どー見てもルアー釣りするような人には見えないので、
あーはいはい、くらいに生返事してたのだが、おっちゃんは気にもとめず
べらべら話しつづける。

「あの岬を超えたとこにある山、見える?あの麓のところがいいポイントなんよー
 小さな集落があって、細い山道抜けていくとさ」

それでも僕は、「またまた知ったようなことをベラベラと。早く行ってくれんかなー。
こっちは釣りに集中したいのに・・・」と思ってた。
で、おっちゃんが立ち去った後です。結局チヌの反応はなく、
クウルさんにおっちゃんとの会話を話すと、

「それさー、めっちゃおもしろいけん、とりあえず、そのポイントに行ってみようや!」

と。言われたとおりの道順をいくと、確かに小さな集落があって、
そこを抜けると、確かに細い道。両脇を草がぼうぼう生い茂る。ここ行けんの?って道。
「千と千尋の世界やん!」と、がぜん盛り上がる。
「これでほんとにチヌがおったら笑うよね・・・」とキャッキャ言いながらクルマを走らせます。
急に道が開けた・・・ら!すっげーいいロケーション!浅瀬が広がる誰もいない海。チヌは・・・・?
おる!おる!

「これで釣れたりしたら笑うよね・・・」ってゲラゲラ笑いながら、
クウルさんがプガチョフを投げると、いいのがついてくるじゃないですか。
チヌから見えないよう、ふたりでしゃがみこむ。その瞬間、バシュッ!って笑。一投。

khulchinu

あの人きっと釣りの神様やったんやろなあ、と。
お盆も終わりやし、ちょっくら下界の見回りしとくかー的な。
だれか会わんやった?8月18日の昼ごろ。

 

赤女にフラれたよ

akajo

アカハタ。五島では赤女(アカジョ)っていいます。よく言ったもんです。
ほんと美しくて妖艶です。おれも赤女に会いたいっ。
ってことで根魚先生ことタコちゃんに連れてってもらったです。
クウルさん、イワテルくんもいっしょです。

専用タックルはもってないので、シーバスタックルで、
テキサスリグで、ってゆうか、見よう見まねインチキ・リグで、底をとんとんと叩いていきます。
3投目でしたか。フォールしきったところで、ゴツ・ゴツ・ゴツと。
こういうの、テレビで見たことある!って思いながら、一拍おいて「そりゃっ」と合わせます。
のった!ドクッ!ググン!ドドググン!引きますねえ。
まわりからも「でかいね!」とか「竿曲がってるね!」とか声がかかり、調子にのってしまいます。
調子に乗るとたいていよくないことが起ります。
すぐに
「フワ~っ」て。バレました。その後音沙汰なく、ボーズです。

iwateru

イワテルくん、さくさくって釣ってました。
笑わせてもらいました。道具も使わせてもらったり、ポイントもゆずってもらったり、
なんか、ほんと、感謝です。
パンを盗まれるところは見られなかったけど、水を崖下に落とすところは見られました。ラッキーです。

takochan

根魚先生は、ほんと先生でした。ビシ、バシ、とかけておられました。
それにしてもこの人を写真に撮ると、いつもピンがあいません。なぜ!
高い肉体能力に起因してると思います。常時、微振動してるんやろうね。
なんにせよ、いつもありがとうございます。

khultakoiwa

ポイントは断崖絶壁の下にあります。
正直、崖とか嫌いです。断崖絶壁を歩いていると

おしりの穴が開いて、なんかブルブルしませんか?ぼくはします。
それでも行きます。おしりの穴に「しっかりしろ!」と声をかけながら行きます。

知らないことに出会うには、怖くても、おしりに力を入れながら進むしかない。
人生とまったく同じです。

風立チヌ(前篇)

arakisan1

お盆休みのうちの一日は、クウルさんとトップチヌにいく。
恒例になりつつあります。ひとりじめであります。
全国のクウル・ファンのために、かっちょいい写真をとってやったですよ。
大きいデータほしい人はレンラクを!

そんなこんなでポイントめぐりますが反応してくんない。いるはいるんです。チヌ。
殺気が伝わってるのかもしれないと、完全によそ見してやってみる。そしたら・・・
「ジュポッ!」
音がひびく!ぐああー見たい!けどまだ見ちゃだめ!殺気出るから!とよそ見を決め込んでると
「ジュポッ!」
こんどは乗った!「きたーーーー!クウルさーーーん!」て叫ぶも・・・
取り込みバラシ!むむむ。この日はボーズで終了。ボーズも恒例になりつつあるぞ!

chinu1

その2日後。リベンジです。
さんざん息子を連れまわし、最後にたどりついたのは
2日前にバラしたポイント。一匹だけ水面にただようヤツがいた。でかい。
ポッパーを投げてちょこちょこと水面を動かしてくる。
ついてきた!ついてきたぞー、きたぞー、きたぞー、、、ジュポッ!
くはー。ミスバイト!

それでもチヌはポッパーについてくる。もうこれ以上ルアーをまけない
足元の護岸の際までついてきて、チヌくんはただ浮いてるだけのポッパーをじーっと眺めてる。

さあ、どうする俺(笑)?ひとまずチヌから自分の姿が見えないように、一歩、二歩、後ずさり。
こちらからもチヌの姿が見えなくなったところで、
護岸の先に突き出した竿先をちょこん!ってやると・・・

「ズボシュ!」

乗ったー!けど、ひとりじゃ取り込めない場所なんです、ここ。
疲れきってクルマの中で休んでた息子の名前を全力で叫ぶ。
そしたら、息子が飛び出してきた。
頼んでないのに手にはカメラを持っている。いいぞ、お前よくわかってる!

chinushu

息子に竿を持たせ、護岸下に降りて、キャッチ!
ゆっくり蘇生してから、はいきたー!

んで次の日、クウルさんと私は「チヌの神様(釣りの神様?)」に出会うことになる。
その話は、後編で。

 

五島の海・ランズ・スルー・イット

ikasanarakabu

早い。あまりにも早い。また一年がたち、お盆が来て、そして終わった。
お盆は毎年イカさん(実兄)(写真上)と連日がっつり釣りに行く、というのが
大人になって以来、ずーっと続いている。
そして、いつのまにか互いに子どもができ、
いつのまにか子らが大きくなり、いっしょに釣りに行くようになり。
・・・という時間経過がおっそろしく、早い。

ikasan1

私はこのお盆にイカさんに向かって心の底から言ったのです。
「一生って、あっという間やね」と。
そしてらイカさんはこう言ったのです。

 あっという間だから、いいんだ。
 つぎの世代にバトンタッチしていくんだ。
 すべては、順繰り順繰り、なんだ。

あまりに名言だったので、文字に斜体をかけてみた。
けれど、この名言は、書き言葉ではなかなか伝わらない・・・
実際は五島弁やったし。あのニュアンスをちゃんと伝えたい。
そう思って、イカさんの名言を、おれの声で再現してみた。
聞いてみてほしい。
イカさんの名言

humiakajo

今年はあまりの高水温のせいか、なかなか魚が釣れなかったのだけど
そんな中でも、五島の海は応えてくれるのだ。
毎年でっかい根魚を釣りあげる甥っ子は、今年もアカジョを釣った。
今年はでっかいのは釣れなかったけど、
五島の海がいい思い出になってくれればいい。
イカさんと私も五島の海にワクワクするガキんちょだった。
すべてはまさに順繰り順繰りなのだ。

okoze

おれはこの一匹しか釣りきらんかった。でも、もう釣果とかどーでもいい。
ありがとう、オコゼくん!
順繰り順繰りの中のひとつの思い出になってくれた。

小さい子を連れての釣りは、けっこうタイヘンだ。
根がかったーだの、もつれたーだの、とかく思い通りに釣りができなくなる。
そんな中、うちの子はムジャキにも
「オレもエギングやってみたいなあ」なんて言い出す。

まだまだキャストも上手にできないのに。
でもまあ、なんでも経験だ、と思って息子用のすっごい短いロッドの先にエギを
結んでやったら、いきなり3連続でイカを釣っていた・・・
なにかが、どんぴしゃハマってた・・・

何事も、思い通りにはならないのである。
思い通りにならずにメンドクサイこともたくさんある一方、
思いがけないおもしろさにもたくさん出会うのである。

shuika1

そういうのが、ビュンビュンと、日々積み重なっていくのである。
さあ、最後にもう一回、イカさんの名言を聞いてください。
イカさんの明言

世界にパフパフあれ!と神様は言った。

ukikusa

コージさんが「パフパフしたい」と、東京からやってきた。
パフパフの名手、冷凍古賀さんに、
2日間みっちりパフパフさせてもらったのである。ライギョ釣り、である。
で、思ったことが(ちょっと話は飛ぶけど)、
「釣りは、人間が世界を学べるように、と神様が授けてくれたもの」ってことだ。

R0021590

まずなんつっても、喜びを教えてくれるよね。釣りは。
はじめてのライギョ釣りだったけど、
想像以上にむずかしくて、なんどもバラして、最後の最後に釣れた。
釣れたっていうか、古賀さんの言ったとこに投げて、言った通りに動かして、
言った通りに止めて、言った通りにまた動かしたら釣れた。
それでも、ライギョの出方、手ごたえ。やっと出会えた喜びつったらなかった。

でも同時に苦しみも教えるよね。苦しいもんなあ、ずーっと釣れないと。
自然のことを教えてもくれる。季節のことや、潮のこと。
今回で言えば、浮草、浮き藻、カエルや田んぼのこと。
地理もね。歴史もそうね。ライギョは食用のために大陸から持ち込まれたんやもんね。
あとなんつっても、人と出会え、と教えてくれる。

オープンであることはいいなあ、気配りできることはいいなあ、
とコガさんの態度を見つづけて思ったなあ。
それも、
コガさんを通じて、神様が教えてくれてるんやろうなあ。パフパフは偉大やなあ。

やっと一匹釣りあげたとき、農作業してたオッサンたちが集まってきて、
どうやって釣った?どこから来た?うれしいだろ?おれは昔よくライギョ食ってたぞ。
みたいにいろいろ話してくるわけです。そーいうのもおもしろいんだよなあ。

R0021593

にしてもコージさんの釣り魂はすごい。
神様もあきれるやろうなあ。
「一日18時間くらい釣りするのがおれたちふつうじゃん?」って言われたから
「ですよねー」って答えたけど、ふつうじゃないかもなあ。
しかも集中力というか情熱というか、体力がすごいんだよなあ。
炎天下の中でもガンガンいくしなあ。まいりましたです。

kao

コガさんとコージさん。
ライギョ顔・・・らしい。別れ際にふたりでライギョになった。
ほら、やっぱ、釣りは神様が人間にプレゼントしてくれたものなのである。

水草の間から、「パフッ!」「バフッ!」って
ライギョの飛びだす音が頭にこびりついて離れない。

音の釣りだな。