- 「空ニ吹ク窯」と言います。
陶芸家になった大学時代の友人を訪ねてきました。
栃木県佐野市。四狭間かなた(しさま かなた)はここで、
「一カ所焼」という焼き物に取り組んでます。
窯の中はこんなでした。
知らなかったのだけど、現代の焼き物は、
焼も物に適した産地の土を使いガスや電気の窯で焼くらしい。
そうじゃなくって、土もその土地のもので、釉薬(うわぐすり)もその土地のもので、
窯も薪もその土地のもので、つくろうじゃないか、というのが、かなたさんの焼き物らしい。
ちなみに四狭間かなたは陶芸家名である。
これがかなたさん(右の人です、念のため)
一カ所焼のこと、あれやこれやレクチャーをうける。
世の中にがつんとインパクトを残すものは、図太いカウンターであることが多い、
と常々思ってきたのだけど
(たとえば、ピカソもウォーホルも、図太いカウンターだった)
(・・・ああ、今のは、わかってる風なことが書きたい誘惑に負けた心もとない一文だった)
かなたさんのやってる一カ所焼も、ずいぶん根本的なカウンターだなあ、と思う。
すっごい当たり前なのに、やってる人がいない、っていうことには
ガツンとくるものが多いのです、ぼくの数少ない経験上ですけど。
そんなわけで、かなたさんの焼き物は、窯から手作り。
そして、焼き物をつくるのと同じ土でつくられている。
ちなみに土は、窯から歩いて100歩くらいの裏山の中でとっていた。
昔から地元の人が土をとってた場所で、土をとっている。
ぼくらが今回見せてもらった窯はできたてほやほやの窯だったのだけど、
その前に使っていた窯の断面を見せてもらった。
今まで使っていた窯の断面
内側は「焼き物」になっている。外側(つまり空気にふれていた方)は土のまま。
こういうの見て、触ると、ほうーっとなる。
すげーな土!すげーな火!ってなる。
かなたさん曰く、
「土は、焼くと、かたくなって水を通さなくなる
・・・っていうレベルで焼き物をとらえていたい」
名言だなあと思った。本人も、名言でしょ?って顔をしていて困った。
で、実際の焼き物も見せてもらう。いわゆる洗練された焼き物というのではなくて
ごつごつしている。質感が、じゃなくて、存在感がごつごつしてる。気がした。
おもしろい。そう、おもしろいんだな。いま気づいた。
四狭間かなたの焼き物
考えてみれば、大学時代からかなた氏は発言がばつぐんにおもしろくって
ずいぶん影響をうけたのだけど、
15年ぶりに会っても相変わらずおもしろかった。
ただ、2人の娘さんたちに「お父さんすっごいおもしろいよねー?」って聞いたら、
一瞬きょとんとして、そのあと、ぶるんぶるん首を横に振っていたのと、
なんだか妙に美人の奥さまに「旦那さん、毎日おもしろいでしょう?」って聞いたら、
本気で「は?」って顔していたのが、すごく気になってはいるのだけど。
さすが陶芸家。火のつけ方がうまい。
夜は窯の前でバーベキュー。
15年ぶりに仲のよい友人3人集まったのだから朝まで語りあかそう、とか言っていたのに
やたらみんなあくびをしだすものだから9時には床に入る。
暗闇の中で、まさか9時に寝るとはなあ、って話を夜中までえんえん話しつづける。
同行のいわさきは、影が映える男だと知った。
翌朝はテラスで朝食。
かなたさんの焼き物でパンを食べ、かなたさんの焼き物でコーヒーをいただく。
お父さんもお母さんもおもしろい人だった。
で、そのまま裏山へと犬たちと散歩。
お父さんがばつぐんにおもしろい人だということがだんだんわかってくる。
同行したいわさきは、だまされてへんな木の実を食べさせられたりしていた。
かなたさんのおもしろさは、父上の影響なのか、と思った。
熊が出ると犬たちは逃げるからね、と聞いて気が気じゃない。
そんなこんなのショートトリップ。
あ、書き忘れたけれど、今回の訪問の直前にかなたさんには第3子が生まれていて
その名を火乃土と書く。ほのと、と読むのだ。めっちゃかっこよすぎる。
「土は、焼くとかたくなって、水を通さなくなる」
そんな根源的な驚きを日々追い求めている
四狭間かなたの陶展情報や一カ所焼のことについては、こちらを。
ショートストーリーなんかも書いてあって、おもしろいです。
http://c-summer.jimdo.com/